どうも!暑すぎて死んだ魚のような顔になってます、塩谷です。
今日は、おなじみ「いい時間」のイベントレポートをさせていただきます!
バーグハンバーグバーグの柿次郎さん、LIGのゴウさんが中心となって隔月くらいのペースで開催される、こちらのセミナー。
1回目は教育ビジネス、2回目は広報戦略、3回目は……
「気持ちを動かすWEBコミュニケーション」
というテーマ。
WEB、という切り口ではありましたが、結果としてはメディア・広告の人にも、アートの人にも、ぜひ知っていただきたい!そんな内容でしたので、気合いを入れてレポートさせていただきます。
今回登壇されたのは、
面白法人カヤックの佐藤ねじさん。言わずと知れたカヤックのエースクリエイター。
そしてもう1人は、tha ltd.の西村斎輝さん。愛称は「ボウズ」さん。
Twitterで長年、ハイクリエイティブなWebサイトを紹介し続けるこのアイコンの主は…
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こんな方。
実は、元々芸人を目指して吉本の養成所であるNSCに通っていた…ということもあって、トークが本当にお上手です。
その人生遍歴については、CINRA.JOBでもインタビューをさせていただいていました。
今回は、そんなお2人のWEBクリエイターさんがご登壇ということで、お客さんにも、デザイナーさんが多かったです。
カヤックのねじさん。THAのボウズさん。
…これは個人の見解なのですが、
カヤックさん=絶えず生まれる面白企画
THAさん=緊張感あるハイクリエイティブ
というイメージがあったので、全く特色が異なる、でもWEBの最前線で走り続ける2社を支えていらっしゃるお2人の思考に、一体どんな違いがあるのだろうか……というのは興味津々でした。
(方向性が食い違って、殴り合いになったらどうしようおろろ…とか。)
まずはカヤック陣営、佐藤ねじさんのトークからはじまりはじまり。
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自己紹介からスタートした、ねじさん。
(もちろん本名は、ねじ、ではない。佐藤嘉彦((よしひこ))さんというそうですよ)
(変わったビジネスネーム持ってる人って、いいなぁ)
仏像やマッサージ、山を眺めることが好き……という穏やかな性格の持ち主です。
でもそんな穏やかねじさん、ものすごく戦略的。
まず、WEBで仕事をするときに、WEB上で何が出来るか? から考えます。
WEBで出来ること
① 情報
② サービス
③ コンテンツ
この中でねじさんが選ぶのは「③ コンテンツ」。
そして、コンテンツってどんな方向性があるか?も考えます。
コンテンツの方向性
● さわって気持ちいいもの
● 美しいもの
● 笑えるもの
● 泣けるもの
● 考えさせるもの
● 違和感のあるもの
● 脳に「!」を生むもの
この中で、ねじさんが狙っているのは最後の3つ。
(加えて、「つぶやきのような作品」も創りたいとのこと。)
ねじさん、自らの狙いが、ものすごく明確です。
誰しも、「自分の得意な方面ってこっちかなぁ…」と感じていることはあると思いますが、ねじさんのように、世の中の全体像を捉えて、その中から自分の方向性をちゃんと定めてるって、実はなかなか出来ていないのかも。これ聞いて、自分のポジション、言語化してみようと、思った。
そして、狙っている中でも特に意識されているのが、
((( 脳に「!」を生むもの )))
マッサージっていいっすよね。最高っす。ちょっと生まれ変わった気分になるっす。
そんな気持ちの良い、ちょっと脳みそに刺激を与えるようなコンテンツ作りが、ねじさんのテーマでもあるそう。
言うのは簡単なんだけど、どうやって思いついてるの? というところで、
“ ブルーパドル戦法 ”
なるものを教えてくださいました。
よく、ビジネスの現場で
「この市場はブルーオーシャン(競合が少ない)ですから、リーディングカンパニーとなるべく、リスク覚悟で開拓しましょう!」とか「ここは既にレッドオーシャン(競合だらけ)だから、ウチが参入しても負け戦だ!」
的な会話はあると思うのですが(ある、か?)
「そもそもブルーオーシャンなんてそうそう簡単には見つからないですよね」
というのがねじさん論。確かに、ブルーオーシャンがそこらに転がってたら、みんな儲ってるわ。
パドル、というのは水たまり、という意味。
ブルーパドルは、ちっちゃいから、競合相手は気づかない、そんな隙間のこと。
「レッドオーシャンで勝つ自信なんてないし、ブルーオーシャンを目指して最初から大きなことをしようとすると、新しい技術が必須だったり、大雑把になってしまう。
だから僕は、まだ誰も見つけていない小さなブルーオーシャン、つまり “ ブルーパドル ” にこそ価値があると思います。」
様々な属性、趣味趣向の人がアクセスするインターネット上では、どんなにニッチなことであっても、上質なもの、面白いものには必ず人の目が集まります。マスメディアよりもずっと“ブルーパドル”が成立しやすい土壌なのかも。
そんなブルーパドルの覇者、ねじさんの作品とは?
▲ ▲ ▲
早速、WEBの制作からちょっと脱線するのですが、特に響いたものを1つご紹介。
「みらいのこくばんプロジェクト」
学校教育がはじまって100年が経つのに、唯一変わっていないのが、こくばん。
私が小学生の頃ですら「黒板ってまじで時代錯誤だなー」と思っていたというのに、そこから10年以上経った今も変わらぬらしいです。。
そこで、黒板メーカーのSakawaさんと、カヤックさんが取り組んでいるのが、
この「みらいのこくばんプロジェクト」。皆の意見を募集して、新しい黒板創っちゃおうぜ!って活動です。
動画が問答無用のわかりやすさなので、そちらをぜひ!
「みらいのこくばん」と聞くと、全面タッチパネル的なものを想像しがちなのですが、
そんな電子黒板は、やっぱり超高額。すべての教育機関が導入するのは、ハードル高いです。
でもこの「みらいのこくばん」は、既存の黒板の上に装置を取り付けるだけ。
ねじさんは「(作り手が、受け手を)置いてけぼりにしちゃう感じは良くないなって、今あるものを活かす方向でアイデアを進めていきました。」と言ってました。
この考え、めちゃくちゃ尊敬するのです。
最先端の技術で、最高のものづくりを出来る人や、そんな環境は、もちろん超すごいんだけど、
「作品としての完成度」は満たせたとしても、「しあわせに出来るひとの人数」は限られちゃうかもしれない。
(もちろん、時代を先に行きすぎるモノをつくることの意義は、存分にあると思うのですが。)
でも、企業デザイナーとして、クライアントの課題を解決するときに、この「受け手を置いてけぼりにしない」という考え方は、本当にほんとに見習いたい!
黒板、という市場は、一見ブルーパドルかもしれない。
でも、全ての学校でそれが使われたら? それは、たちまちブルーオーシャンに。
ねじさんは
「最初は小さな水たまりであっても、時には海につながる秘境もあるかもしれないです。」
と言われていたのですが、そんな秘境っぷりを存分に感じさせる、アイデアフルなプロジェクトだと思わされました。
他にも、「そんなことよくぞ思いつかれる…」というねじさん作品がたくさんご紹介されたのですが、全部書くとたぶん2万文字くらいいってしまうので、その全貌は
http://nezihiko.com
でご覧ください!(ねじひこドットコム。本名の「よしひこ」も忘れてはいらっしゃらないようです。)
私的には、スマホ連動ホラー映画『貞子3D2』のスマホアプリが怖すぎて震えたので、それは閲覧注意で。
ちょっとホラー苦手なので、私は絶対やらないんですけど、
こんな感じの、映像にあわせてスマホが誤作動する、という怪奇現象が(これはデモCMバージョン)
スマホアプリをダウンロードして映画館に行くと、友達から延々と「どうして助けてくれないの?」とメールが来たり、映画の上での電話が自分のスマホにかかってきたり……という怪奇現象が延々と繰り広げられたあげく、その日の帰宅後の深夜0時に、貞子からの着信が止まらなくなるとのことです。
「拒否」を押しても押しても鳴り止まない着信。
私、スマホって、恋人級に大切な存在だなぁ…って日々握りしめてて、握りしめることで安心を得られるんですけど、
こんなことされたら恐怖しかないわ。佐藤ねじ氏、鬼か。
▲ ▲ ▲
はい。
後攻は、THAからボウズさんのご登場です!
中村勇吾さん率いるクリエイティブプロダクションに所属し、最前でものづくりを担っておられる、ボウズさん。
デザイナー兼プログラマーとして、名だたるプロジェクトの数々を担当されています。
ボウズさんが手がけたお仕事には……
NHKの人気(こども)番組「デザインあ」から派生した展覧会の
デザインあ展。大人気でしたよね。私も行きました。笑えるくらいに並びましたけど、本当に楽しかった。
その中でボウズさんは、「モノ・オトと映像の部屋」の映像制作を担当されたとのこと。
デザインあ展の中でも、ほんとうにこの部屋はゾクゾクして、音と映像と小物たちのリンクがきもちよくって、30分くらい見入ってしまった!それをボウズさんが創っておられたとは・・・!
こればっかりは、実物で体感するのが一番なのですが、「行けなかった……」という方はこちらの動画を……。
そして、最近手がけたものでは、超話題になったアプリ「UT me!」
このアプリも、実はボウズさんがコミットしていたもの。
画像をアップロードしてからスマホをシェイクしたら、そのイメージがいいかんじに加工されて、そのままUTとして売れちゃうっていう。センスのないわたくしでも、なんかおしゃれに完成しちゃうのが、すげーーーと思った。
利用する上でのストレスを一切感じさせず、更にプラスアルファの「きもちいい」を提供できる、すごいアプリだなぁって。
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デザインあ展も、UT me!にも、共通して言えるのが、
誰かが創ったことを感じさせないほどの完成度、であること。
というのは、
まるで、風で木が揺れる様子とか、重力や地形に従って流れる水とか、そういう「超当たり前の自然現象」に近しいくらい、一つひとつのモーションに違和感がないのです。ヒトの感覚に、違和感なく馴染むかんじ。
それって物理的に算出して導く訳じゃないんだろうけど、絶対的にキモチイイ…という配置や、動きの美学。そんなバランスって、ミクロ単位で存在するものだと思うのです。それってきっと、卓越した技術を持つ職人さんや、年を重ねた演奏家の方なんかが持っているような、研ぎすまされた肌感なのかも。
THAさん、ボウズさんの作品には、そんな「最後の1ミリまでチューニングし尽くした」ような、ある種原始的な気持ち良さが、確かに存在するような気がしていてたのです。ものすごく最先端なので、原始的というのはおかしいかもしれないのですが…。
そこまで高いクオリティに辿り着くまでの過程を、どのように歩んでいるのか?
というところをボウズさん、めちゃくちゃわかりやすく説明してくださいました。
モノヅクリをする経路。ボウズさんも以前は、超難解なぐるぐるの迷路のように感じていたようで……
でも、実は、
迷路はそのまま、樹形図に形を変えるのです。
http://bl.ocks.org/mbostock/より
左側からはじまって、右側にある最後の完成ポイントまで、枝分かれを繰り返しながらも、進んで行くものづくりの過程。
わかりやすくすると、こんなかんじ。
迷い込むのではありません。何度も選択を繰り返して進んでいくのが、制作の過程。
ものを創るとき「このへんで、手を打っておくか…?」って時はあるとおもうのですが、実はそのとき、こんな感じかもしれない。
もっともっと、突き詰められる可能性があるかもしれない。
でも現実、締め切りとか、リソースの限界とか、予算とかあるからな……
そこで、1度「完成かも?」と思ったものを、3つくらい前の段階まで戻ってみると、
本当に、自信を持って「完成だ!」ってものに辿り着く。
選択して、選択して、完成したと思って、でも戻って、また選択して、選択して、やっと完成する。
このプロセスの実例として、ボウズさんがルイ・ヴィトンの運営するギャラリー「エスパス ルイ・ヴィトン」
での展覧会のために制作したWEBアニメーションを見せてくださいました。
何回も「選択する」「戻る」を繰り返して、光の表現を追求していく過程には、たくさんのボツ作品も生まれます。
でも、「これはボツでした」と言ってるやつも、
正直、ぜんぶ、かっこいい
んですよね。
どれを見ても、クオリティが高いし、綺麗だし……。
でも、「もっと出来る」「もっとキモチイイものが創れる」と思い続けてその追求を辞めず、
何度も戻る作業を繰り返して「完成」に辿り着く。その終着点に出来るモノは、やはりどの試作よりも、しっくりくるものでした。
完成品は、こちらからご覧いただけます!
GEOMETRY OF LIGHT BY ALYSON SHOTZ | ESPACE LOUIS VITTON TOKYO
もちろん無闇に手を動かしていても、ちょっと訳がわからなくなっちゃうので、ボウズさんが制作過程で大切にしてるのは
並べる・残す・戻る
の3つだそうです。
わかりやすいように、本イベント「いい時間」のロゴサンプルを色々なフォントで並べてくださいました。
めっちゃ大量に、いい時間。
そうすると、この中から「選ぶ」という行為が出来るようになり、「良いデザイン」の説得力もぐっと増します。
人って「頭のなかだけに存在するもの」って、すごく美化して考えてしまうから、
こうして可視化して並べることによって、建設的にクオリティを高めていくことが出来るそうです。
イメージだけで話すのとは違って、クライアントへの説得力も増しますよね。
で、この中から良いモノを選択して進んでいく訳なのですが、その過程で生まれる捨て案も、消さないのがボウズさん流のやり方。
いくつものファイルを「名前をつけて保存」しておいて、悩んだらいつでも戻れるようにしておくそうです。
そうすると、ぐっと深い領域まで、創り込むことが出来るんだって。
でも、「これって、1人でやってる制作だといいけど、複数人のプロジェクトだと大変なんじゃない?」という意見が出ました。
そうですよね。共同作業の場合、他の人の制作範囲も巻き戻すことになるので、なかなか難しい現実はあるかと。
そんなときボウズさんは、先ほどの樹形図をチームメンバーに見せて、説得するそうです。
「今この段階にいるんだけど、一度戻ることで、もっと深くまでいけるんです」って。
これってなかなか、やりたくても出来ないことだと思うんだけど、
この追求する姿勢があるからこそ、究極にキモチイイ、形や、動きが出来上がるのか…と。
そんなボウズさんが大切にしている姿勢は、
「誰でも出来ることを、誰もできないくらいやる。」
…ということ。
ねじさんのブルーパドル戦略とは異なって、「美しいものをつくる」という市場には、競合他社はたくさんいるかもしれません。それでも、多の追随が到底追いつかないところまでやっちゃう。
そんなボウズさんは、インターネット時代の職人さんでした。
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そんなお2人のトークに、会場ギュウギュウにあつまったお客さんも、メモを取ったりインプットしたりで頭フル回転です。
今回のいい時間では、セミナー中ずっとTwitter経由で質問も募集していたのですが、ほとんどの人がTwitterなんて開く暇もないほどに、音速で過ぎていく時間だった……。プレゼンの中身も、資料のクオリティも高い、さすがのこだわりっぷりでした。
肩書きとしては「WEBデザイナー」と呼ばれるかもしれない、そんなお二人だけど、ここまで考え方が違う。
「一流のWEBクリエイターになるためにはこうするべきだ!」だなんて決まりは一切なくて、
どんなクリエイターになりたいか?美しさをどこまで突き詰められるか?という、開拓心や、好奇心こそが、どんどんクリエイターとして力をつけて行く由縁なのだなぁと思いました。
そして、会場に集まったデザイナーの方から、「悔しい!」という声が多数出ていたのも、今回が初めてじゃないだろうか。
こんなもの見せられてしまったら、そりゃ悔しいわ。
でも、その「悔しい!」がどこかで形になって、
「あのときのいい時間がきっかけで、この作品につながりました!」って、
すっげえやつが、3年後とかに生まれてるのかもしれない。
そんなプラスの刺激にあふれた、とてもいい時間だったなぁ、と思ったのです。
ゴウさん、ボウズさん、ねじさん、柿次郎さん。
(麦わらと麦わら、ボウズとボウズという偶然w)
司会のお2人、そして運営スタッフのみなさん……おつかれさまでした。
佐藤ねじさん。西村斎輝さん。本当に、ありがとうございました!
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えっと、私も、お仕事としては、最近、自社のサイトリニューアルを担当しまして、、、
Webディレクター人生としては1個、生んだぞ……!!という感じもあったのですが、
お2人のクリエイターとしての姿勢が、ちょっと尊大すぎて…
自分の定義から、また見つめ直したいなぁと思った次第です。
(((でも頑張ったので見ていただけると嬉しいっ…。)))
https://www.cinra.co.jp/
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話を戻しまして、「いい時間」は、これから開催場所を「いいオフィス」ってところに移動して(同じビル内の別フロアのようです)
更に規模拡大で開催していく予定です!
そのあたりは、私もTwitterなどなどで情報解禁になったらすぐに叫びまくりますので、
よかったらチェックしてみてくださいね。
https://twitter.com/ciotan
それでは、最後まで読んでいただいて、ありがとうございましたー!!